「ななふし先生の相続相談手帳」の連載始めました!
ななふし先生の相続㊙相談手帖 第1話 ①
遺産の大分を占める不動産全部を長男に渡したい
梅から桃そして桜へと、ふくよかな香りが舞う春。
冬をくぐり抜けた開放感に浸っていたななふしに、藤田さんから「相談したいことがあるので、事務所にお伺いしたい」と電話があった。
電話を切った後、たしか藤田さんは奥様に先立たれ、同居されている長男と大阪に嫁いだ長女とアメリカ勤務の次男の3人の子がいたなとななふしは思い浮かべ、何の相談かと考えた。
「一緒に住んでいる長男一家とは楽しく暮らしているけれど、長女や次男は顔も全然見せてくれない」と藤田さんがよくぼやいていたことを思いだし、そろそろ80歳になり相続のことが気になりだしたのかなと思い、もしそうなら、簡単には悩みの解決方法を見いだせないかもしれないと気を引き締めた。
遺産相続の8割をしめる不動産
事務所を訪れた資産家の藤田さんから、予想どおり遺産の大部分を占める不動産を全部長男に渡したいという話が終わると、ななふしは次のように切り出した。
「日本では、民法に定める相続人(法定相続人)が民法の定める割合(法定相続分)にしたがって遺産を相続することになっています。
藤田さんには3人のお子様がいらっしゃいますので、相続分は平等に各自3分の1ずつとなっています。
藤田さんのご希望がかなう最も理想的な遺産分けは、ご長男が不動産の全てを相続され、ご次男・ご長女が残りの財産を相続された結果、それぞれの取り分が相続財産の3分の1になっていることです。
ところが、困ったことに藤田さんの場合には、私の計算した相続税評価額によるとご長男に相続させたい不動産だけで、遺産相続の約8割を占めていますね」
「そうすると、子供達それぞれの法定相続分が3分の1だから、長男に不動産の全てを相続させることはできないということですか?」
「いえいえ、相続は必ずしも法定相続分の割合に従って行わなければならないわけではありません。
藤田さんが生前にご長男に不動産の全てを遺すという遺言を作成されれば、法定相続分とは異なる分け方を指定することもできます。
遺言は遺言者の死亡と同時に効力を生じますので、藤田さんがお亡くなりになった場合には、直ちにご長男は全ての不動産を相続できます。
ただし、その遺言どおりにうまくおさまる場合もあれば、遺言に不満で大もめになることもあります」
「それは、どういうことですか?」
次号へつづく